著作権分科会法制問題小委員会、shiraistさんとtsudaさんの実況まとめ

twitter上で誤字の修正があったものは修正してあります。
また、一部内容が重なり、分かりにくくなるかとは思いますが、タイムラインの修正はかけていません。以下、黒文字がshiraistさんで青文字がtsudaさんです。

  • 17時から文化審議会著作権分科会法制問題小委員会を傍聴します。
  • 審議会の会場に来た。分厚い資料がいっぱい配られた。
  • 今日の議題は関係者へのヒアリング。米国法の学説で筑波大の村井麻衣子講師、凡例で神奈川大学の奥邨弘司准教授、訴訟制度・法文化で山本隆司弁護士。英連邦諸国法で同じく山本弁護士、大陸法上智大学の駒田泰士准教授、その他の国で三菱UFJの渡辺真砂世研究員からヒアリングを行う。
  • 審議会スタート。高塩文化庁次長より著作権法改正案可決の報告。「国会では国会図書館の電子化の議論が中心だった。-Googleに関わる質疑もあった。私的複製については、ユーザーを抑止するのではないかとの質問があった、が権利者と調整の上そうらないよう進めると答弁した。
  • 事務局「ダウンロード違法化については、ユーザーに不利益がないよう、権利者と調整しながらやっていくということを国会でも報告させてもらった。質問もあまり国会では出ず、衆参とも全会一致で法案が通った」
  • 高塩次長「権利制限の一般規程の導入については審議を行っている旨答弁した。」
  • 事務局から配付資料とヒアリング対象者の紹介。
  • 今日はさまざまな国際法の専門家からのヒアリングが中心。
最初は米国法の学説について、筑波大学大学院の村井麻衣子さんから。
  • 米国の学説について、村井氏より説明「フェアユースに否定的な学説はないかと問われたが、歴史的経緯や調整機能を果たすものとして認識されており、否定的な学説は見あたらなかった。」
  • 村井「著作権法の目的は文化の促進と学問の発展のために、著作権者に独占権による報酬を得る機会をあたえ、創作へのインセンティブを付与すること。フェアユースによって利用が正当化されるかどうかは使用の目的と性質、市場への影響を重視し人格権やプライバシーなどは考慮すべきでないとしている」
  • 村井氏。Leval判事の学説を紹介。「変形的利用を重視し、使用目的要素と市場への影響の要素を重視している」Godonの市場の失敗理論を紹介。「三段階テストを提唱したが、後に厳しすぎたとしている。」
  • 村井「Gordonのフェアユースの市場失敗理論とは、市場を通しては達成されないが社会的には望ましい取引を許容する。つまり、市場の失敗を治癒するための理論としてフェアユースを捉えている」
  • 村井「Lorenは知識や学問の発展を抑圧しないためにフェアユースの果たす役割が重要になってきていると認識している」
  • 村井氏。Lorenによる市場の失敗の再定義、Gordonによる理論の修正を紹介。「市場の機能不全だけでなく、言論の自由などが関わってくる。」理論的構造、実証的研究について紹介。「判例から、事実に基づくものであるばあいや、非商業目的である場合はフェアユースが認められやすい。」
  • 村井「フェアユースに関する米国の判決は少ない。年間10.9件程度。そのうちフェアユースが認められたケースは4.5件。裁判所がフェアユースかどうかあらかじめ結論を導く誘導は行われていない。あとは原告作品が事実に基づくものや被告の利用が非商業的目的の場合フェアユースが認められやすい」
次に判例について神奈川大学准教授の奥邨弘司さん。
  • 奥邨准教授より、配布資料(報告書)を基に判例を調査下結果を紹介。「フェアユースを論じる際には著作権侵害が前提。フェアユースはケースバイケースの判断で、4要素のすべてについて検討されるべき。」
  • 奥邨「フェアユースには明確なルールがない。4つの要素があり、そのすべての要素がまとめて考慮されるべきとされている」
  • 奥邨准教授の説明早すぎて、実況できない。
  • 奥邨「第1要素は著作物の利用が transformative変容力があるか。ニュース報道や解説、批評、教育などと関係する。第2要素は著作権が意図する保護の確信により近いものはフェアユースの立証が難しいということ。第3要素は許されるべき複製の程度が利用の目的と性格で変わるということ」
  • 奥邨「引用については米国著作権法に引用の規定が存在しないので、フェアユースで争われることが多い」
  • 奥邨「利用形態としては、パロディと引用が多い。パロディはフェアユースと認められやすい。」
次は山本隆司弁護士。米国訴訟制度と法文化。
  • 山本弁護士より法文化の説明。「アメリカとイギリスは法文化が違う。米国法の法文化。アメリカの裁判所は法解釈だけでなく法を作るところ。フェアユースをどう利用して法を作っていくか、裁判所への期待が大きい。米国の特殊性だ」
  • 山本「米国の裁判所は、法を解釈するだけでなく、法を作るところという位置づけ。日本とは違うのでフェアユースを導入する場合十分な検討を行う必要がある。米国は弁護士費用が高い。1000万円の損害賠償でも弁護士費用が1億円を超えると言うことはざら。巨額な裁判費用でも裁判する文化がある」
  • 山本「訴訟開示の資料が膨大になり、そのための処理が膨大になるので、訴訟費用(弁護士費用)が膨大になる。それをよしとする文化がある。米国は法曹人口も多い。英国でもそれほど多くないが、それで英米で違いがあるのなら、日本はもっと法文化が違う」
  • 山本「法曹人口の違いも大きい。人口10万人あたりの法曹人口だが、米国は356人、日本は19人。英国は215人、ドイツは178人、フランスは73人。日本のこの法曹人口でフェアユースのような裁判制度運用が行えるのかどうか、ここは問題になるだろう」
  • 山本「フェアユースの法理が成立してから、140年は大きな裁判は無かった。ソニー事件などが出てから重要になった。日本で導入するなら判例をベースにしないと無駄になるのではないか」
質疑応答。
  • 村上「フェアユースの裁判例少ないということだが、和解で終わっているものも多いんじゃないか。それはどれくらいの件数があって、どれくらいの比重があるのか」
  • 質疑。村上委員「村井氏に質問。フェアユースで訴訟の前の和解で終わっている事例があると思うが、どのくらいの件数か。
  • 奥邨氏に質問。米国でフェアユースで認められて、日本の現行法では認められない事例で明白な例があるか。」
  • 村上「米国でフェアユースがあって争われたもので米国では認められるケースが、日本で現行法前提になったときに明確に違法になってしまう。そういうわかりやすい事例はあるのか」
  • 山本「具体的な和解率はわからないが、ディスカバリーの結果、お互いの証拠が全部明らかにされるのでその時点で和解になることが多い。ただ、フェアユースの場合はディスカバリーの時点で和解にいたるのは少ないのではないか」
  • 村井氏「和解の件数はわかりかねる。和解でかなり解決していると推測される。」
  • 山本弁護士の補足「一般的に言えば、膨大な訴訟資料を開示した段階で和解するケースもあるだろう。予想としては、件数はそれほど多くないのではないか。」
  • 奥邨「パロディは、米国では比較的認められるが、日本では厳しい。人格権の問題もあるので一概には言えない。検索エンジン関連はこれまでは日本では認められなかった。」
  • 奥邨「パロディ関連の事例は米国では認められるケースが多いが、日本ではほとんど認められない。あとは検索エンジンなどは日本では難しい。逆に米国には引用がない。日本では引用で処理できるものが米国ではフェアユースで複雑に処理しなきゃいけないというケースもあるだろう」
  • 村上「Googleのブック検索も最初はフェアユースで争ったが、和解ではフェアユースのところは触れない形になったが?」
  • 山本「私が関与した事件でも、裁判所が強引に和解のテーブルに付かせてということは日本と同じようにある」
  • 村上委員「山本弁護士に質問。Googleも和解しているが、フェアユースについては勝ち負けは決めていないが、有償で決着をつけた。このような和解は多いのか?」山本「日本同様、裁判所が和解勧告をするので、そのようなケースは多いと思う。」
  • 道垣内委員「スリーステップテストを意識した議論というのはあるのか?」
  • 山本「ベルヌ条約加入時問題になったのはフェアユースよりも、人格権がないというところだった。むしろ今それが議論になっている」
  • 道垣内委員「フェアユース導入時にはベルヌ条約に加盟していなかった。加盟するときにどのような議論があったか」
  • 山本「ベルヌ条約加盟時は人格権が問題になって、フェアユースは問題にはならなかった」
  • 駒田氏から補足「ヨーロッパでも、アメリカ型のフェアユースベルヌ条約の範囲内と解釈する人が多い」
  • 多賀谷委員「報告書に違和感がある。フェアユースを認めるのは公共の利益が背景があるが、変形的利用の時にフェアユースが認められるとなるなら、元々の著作権者と利用者の関係がどうなるのかわからない」
  • 奥邨「フェアユースが認められたからといって、それが利用者の権利として認められるわけではないと思う。変形的利用は二次的著作物なので、それに対する保護は別途与えられるだろう」
  • 多賀谷委員「報告書に違和感がある。元の権利者と、フェアユースでTranmsformして利用した人の作ったモノに権利が認められるのかどうか、その辺の説明が欲しい。」
  • 奥邨「Transformで利用した場合に必ずしも権利が発生するわけではない。二次著作物になるかの議論」
  • 駒田「多賀谷委員の指摘した議論はむしろ欧州で議論になっている。権利者が技術で著作物をガードしているときに、利用者がそれを利用したいと思ったときに一定の枠組みでそのガードを外せる規定がドイツやフランスで実定法として取り入れられつつある」
  • 小泉委員「感想だが、フェアユースの規程は日本法の引用の規程に似ている。」
  • 大渕委員「フェアユースと個別規程の関係で問題になっているかどうか、示唆になる点を教えて欲しい」奥邨「今回の報告書では、どちらか選ぶ事例は無かった」
次は英国の法制度。山本さんから。
  • 次に英連邦諸国法について山本弁護士より説明「私は英国の専門ではないので、今回の報告書のために調べた。英国は個別規程をおいている。その中にフェアを要件にした規程がある。研究・知的学習、批判・評論、時事報道、授業の4項目が該当する」
  • 山本「英国は日本と同じように細かく制限規定をたくさん設けている国。一般的な権利制限規定はない。そのため米国型フェアユースを導入しようかという話は出ているが導入するという結論にはなっていない。そのかわりフェア・ディーリングという規定があり私的学習、研究、批判、報道、授業などはOK」
  • 山本「英国でも米国型のフェアユースを導入すべきとの議論がなされているが、まだ導入されていない。フェアユース否定論の根拠3点。1.英国では判例法理としてフェアディーリングの適用が拡大していない、裁判官の問題。2.法文化が違う。3.導入した先の見通しが立たない。」
  • 山本「フェアユース反対された理由はフェアユースが入っても、裁判官が変わらなければ意味がない、ということ。あとは米国と法文化が違う。最後はフェアユースが入っても将来的にどういう見通しを示すのかはっきりしない、ということ」
  • 山本「デジタル対応の報告書のなかでフェアユースを評価しているが、結論としては個別規程の充実になっている。」
  • 山本「カナダではフェアディーリング規程は柔軟に運用されている。たとえば商業的研究は英国では認められないが、カナダでは認められている。パロディも同様な議論になっている。立法活動では、フェアユースの導入の提案は無かった。グレーゾーンが広がり、裁判になるので、利用者を萎縮するから」
  • 山本「パロディについてはフェアディーリングで合法にできるんじゃないかという話が出ている。メディアシフト、タイムシフト、研究などは個別規定でやるべきという話になっている。フェアユースによりグレーゾーンが広がって裁判費用がかさむとむしろ利用側に萎縮効果があるのではという話もある」
  • 山本「オーストラリア。2006年に法改正を行い、パロディなど個別規程を拡大した。フェアユースに対しては否定的。」
  • 質疑。村上委員「英国では、これまで紹介していただいた米国の法文化は無いという風に受け取って良いのか」
  • 山本「英国の一般的な法知識が無いので私には答えられない。かなり違うと思うが。裁判所で法を創造するという概念は米国特有ではないだろうか」
  • 大渕委員の質問はうまくまとめられなかった。
次に欧州大陸法フェアユースについて上智大学の駒田泰土准教授。
  • 大陸法について駒田准教授より説明。「EU指令と仏独を中心に取り上げた。EU指令は権利制限について定めているが、過剰な権利制限をしないためのスリーステップテストを盛り込んでいる。」
  • 駒田「仏独とも個別規程で、一般条項を含んでいない。限定列挙。フランスではスリーステップテストを規程している。仏法では権利保護が大前提なので、権利制限は厳格解釈。人格権重視。独では柔軟な解釈論の主張が出てきていて、主流になりつつある。」
  • 駒田「独で、権利の保護と利用の調和を図る議論が台頭してきた。判例の積み重ねによってでてきた。技術の進展に対応する類推解釈も判例でなされてきている。EU指令にスリーステップテストが規程されているので、国内法に無くてもEU加盟国は拘束される。」
  • 駒田「フランス及びドイツの制限規定の解釈態度はかなり厳格で、それが著作者人格を重視するアプローチを結びついてる。法律の構造としても両国は著作権の内容を一般規定として定立させ、反対に制限規定を個別に列挙してる。これは日本と同じで「保護」が原則で、それ以外は例外として認めている」
  • 駒田「ただ、最近のドイツは硬直的な著作者中心主義から脱し、柔軟な解釈論を展開しようという議論も出てきている」
  • 質疑。小泉委員「欧州法ではフェアユースの導入は認められないだろうと報告書に書かれているが、これが結論か」
  • 駒田「難しいだろう」
  • 道垣内委員の質問は聞き漏らした。村上委員の質問は趣旨がよくわからない。駒田氏も困っている。
  • 大渕委員「欧州の議論の中で、個別規程では拾いきれないものとして念頭に置かれているのは新技術対応が中心なのか、そうではないのか。何を念頭においているのか教えて欲しい」
  • 駒田「ドイツの議論では、何を念頭に置いてと言うより、法改正の手続きに時間がかかることが主な理由。」
次にその他の国について渡辺研究員より。「米国型フェアユース規程、英国型フェアリーディング規程をベースに類型化を行った。」
  • 渡辺「米国型を導入済みはイスラエル・台湾・フィリピン。米国型+スリーステップテスト導入済みに韓国(審議中)、米国型+英国型がシンガポール、英国型+スリーステップテストがオーストラリア、英国型がカナダ。」
  • 国別に説明しているけど、まとめるのが追いつかないので勘弁。
  • 渡辺「韓国では、p2pでダウンロードすることは私的複製には該当しないとの判例が出ている。」
  • 渡辺「シンガポールでは特定の利用目的については英国型、他の利用目的については米国型。対米FTAのために導入された。韓国と経緯は似ている。」
  • 渡辺研究員の説明はほとんど要約できなかった。質問も出ない。
  • 土肥主査「今後のヒアリングの進め方について、事前にヒアリング事項を出して欲しいとの意見があったので、事務局から説明」
  • ヒアリング事項(案)は資料4で配布されている。
  • 事務局「導入を是とする場合、非とする場合で質問事項は分かれるが、ヒアリング対象者がどのような一般規程の概念を念頭に置いているかを明らかにするためにまとめた。」
  • ヒアリング事項(案)に対する意見は無し。以上で法制問題小委員会は終了。次回は一般規程推進派の意見を聞く予定。